これまでの主な活動

寺田寅彦の随筆「茶わんの湯」(1922)では、日常の観察から地球惑星科学現象を深く広く考察したように、我々の日常にあるものを使って実験をし、それらの現象から地球惑星科学現象を考察し、現象を支配する物理の理解や新しい問題の発見のきっかけを作ることはできないかと考えた。

家の中を見渡したとき、様々な実験の素材が揃っていて、温度調節ができ、しかも失敗しても問題なさそうな場所となれば「キッチンで実験!」となるのは自然の流れであった。

そこで栗田敬(東京大学名誉教授)らは、2001年の日本地球惑星科学連合大会において「キッチン地球科学」のセッションを立ち上げ、以来、途中休止期間(2009年~2015年)を挟むこともあったが、現在までその活動が続いている。


これまでに「地学現象をわかりやすく教授するためのツール」として、アウトリーチや初等・中等教育の現場に大きな影響を与え、新聞の科学欄やNewtonなどの科学雑誌に取り上げられるなど、地球惑星科学や地学教育の分野で高い評価を得てきた。皆さんの中にはNHKの『ブラタモリ』などの実験をご覧になった方もいらっしゃると思うが、身近な物を使った「キッチン地球科学」実験は、数値シミュレーションの動画よりも、現象をより実感的に理解するには効果的であった。

近年、東京大学地震研究所の共同利用(2017~2019)において「キッチン地球科学:動手頭脳刺激実験の模索」というテーマで研究集会を行なってきた。高等学校や大学の教員、博物館関係者、研究所、メディア等、幅広い分野の方々が集まり、科学、教育、社会との関わりなど、多岐に渡って闊達な議論が交わされた。